少し前に上野の美術館へ、VOCA展というものを見に行ってきました。
どの展示を見るか決めずに友達と、平日のまだ桜が咲いて人がごった返す前の上野に。
そこで何となく気を惹かれて入ったのが、VOCA展なのでした。
若手の作家さんたちの作品が、とにかくたくさん並んでいる場所でした。
ぼくは誰かを何かに誘うとき、自分から声を掛けられる相手というのが片手で数えられるほどしかいないような気がします。
ただ、そんな気の置けない友達と一緒に居るときの行動プランは、これが女の子と一緒だったらすごくいいデートになるのにな、と思うほどのもの。
横にいたのはもちろん男友達でした。
平日の昼間から、男2人で美術館に行ってきたんです。
入ってすぐの場所にあったのは、日光に当たって本がページとページの間に映し出す影の、その一瞬を映像作品として残したもの。
正直なことを言ってしまえば、作品を作ろうと思った意図を完全に理解することはできませんでした。
初っ端から何だかすごいものを見てしまったな、と息を飲んだのですが、その後も奥へ進めばどれも、ぼくたちが普通に生きていればどこかで出くわしているであろう日常がずらり。
それを作品に残した方は、他の人と何ら変わりなく同じ世界を生きていながら、日常で起こるふとした出来事に焦点を当て、壮大な作品へと仕上げる。
最初に本の作品を見た時点で思いましたが、何でもない毎日をこれだけの解像度と豊富すぎる感性を持って生きていたら、普通の人の何倍も疲れそうだよね、なんて話をしていました。
それを必死に解釈しようとする、ぼくら2人も展示会の7割ほどを見たところで、結構ぐったりしてしまいました。
1時間以上掛けて全ての作品を見て、夕方になる頃にはぐったり。
本当は他の展示会もはしごしたいところでしたが、そんな元気も時間もない程には、とんでもなく高い解像度で世界を切り取る芸術家たちの作品を見て疲れてしまいました。
日常の中に潜んでいるもの。
映画にしても音楽にしても、芸術にしても、壮大な規模で繰り広げられる物語も夢があって好きです。
しかしぼくはそれ以上に現実の中に潜んでいるそれを、まじまじと見せてもらえる方が好きだな、と改めて思った経験でした。
もしかしたら、とても現実主義な性格なのかもしれません。
ギルバート&ジョージの名作アートとSupreme
そんな風にぼくは、気が向いたらふらっと美術館や展示会に行くことが、結構好きです。
洋服もどちらかと言えば、自分を着飾るためというよりも、素晴らしい作りや品質に感動をしたいタイプ。
ぼくが刺繍の入った洋服が好きなのは、それのとても分かりやすい形だと自分でも思っています。
いわば素晴らしい洋服は「着れるアート」だと思っているのですが、そんな中で最近出会った素晴らしい洋服がひとつ。
説明不要の有名ストリートブランド、Supremeより展開されたギルバート&ジョージというアーティストとのコラボアイテムでした。
正直、ぼくは彼らの名前を今まで知りませんでした。
ただ、Supremeのホームページを見て、彼らのアート作品がドカンと大きくプリントされたそれに衝撃を受けたんです。
最初は「少しいいな」と思う程度でした。
色使い、迫力のある大きなプリント。
Tシャツとパーカーが展開されていて、ネットで見た段階ではどちらを買おうか迷っていました。
でも、Supremeを着るって何だかミーハーな感じがしてほんの少しだけ嫌だな、とか、パーカーならボディーの品質はいいけれど、Tシャツはあまり良くないんだろうな、なんて考えていました。
巨大なプリントは迫力があっていいけれど、シルクスクリーンのあの、少しベタッとした感じなら嫌だな、なんてことも考えていました。
そうは言ってもアート作品自体の迫力に引き込まれてしまったぼくは、無意識にもオンライン発売が行われる11時の少し前に目が覚めました。
アラームもかけていないのに、ヒルナンデスが始まる前の時間に起きるのは少し珍しいことでした。
11時から販売開始されたそれは、思っていたよりもスムーズにカートへ入れることができました。
Supremeのアイテムってとにかく転売する人が多いから、もっと激しい競争をするものかと思っていた。
カートに入れることができたことから、悩む時間くらいはあるなと思って、そこに入ったTシャツとパーカーでどちらを買うか、そもそも買うかを迷い続けていました。
パーカーは3万円。
品質重視のぼくは、プリントの質感を予想しては「このパーカーに3万円は少し高いかもしれない」と何度も思いました。
迷って迷った挙句、「よし買おう」と思ってクレジットカード情報を入力し決済を完了しようと思ったそのとき。
売り切れてしまい、買うことができませんでした。
迷うことに時間を掛けすぎたのが敗因ですが、どうもネットで実物を見たことがない服を買うことには、やっぱり「思っていたのと違う」可能性が付き纏うのでずっと抵抗があります。
買えなかったな、でもどうせすぐ忘れるんだろうな、と思っていると、「渋谷店にまだパーカーの在庫があったよ」といつもお世話になっている方からLINEで教えて頂いて。
その日は起きてから部屋でずーっとぼーっとしていたのですが、買うかどうかは別にしても実物を見れる内に見に行ってみよう、と思いバスに乗りました。
Supremeの渋谷店に着くと、ネットで散々見たパーカーとTシャツがずらり。
実物を見ることができた喜びと、相変わらず買うならTシャツとパーカーのどっちにするか、を無限に迷い続けていました。
お店の端と端にある、同じデザインのTシャツとパーカーを見比べる為に店内を何往復もしました。
1時間くらいお店の中に居た気もします。
最終的に「ぼくはパーカーが欲しい」と、いつものように最初の最初に思い立ったことに立ち返る。
やっぱり直感って正しいんだな、と思いました。
迷っているのはその値段でした。
ボディーはシーズン毎に個体差があるのかもしれませんが、ぼくが知っているSupremeのパーカーよりは気持ちざっくり織りの軽めな作りになっているようで。
「悩む理由が値段なら買え、買う理由が値段なら辞めておけ」みたいな言葉をふと思い出したので、そのままレジへ。
今となってはTシャツも一緒に欲しかったかもな、と思っていますが、パーカーを買えて良かったな、と思っています。
前置きがとても長くなりましたが、同じデザインながらもTシャツとパーカーが欲しくなるくらい、ぼくが惚れ込んだデザインのパーカーがこれ。
表にはシンプルに「LIFE」という文字が入っているだけ。
こうやって写真で見てみると、このシンプルな表の雰囲気がとてもいいな、と改めて思います。
そしてぼくが惚れ込んだ、本当のポイントはこちら。
背中にとても大きくプリントされた、ギルバート&ジョージのアート作品。
何でも彼らの「Death Hope Life Fear」という有名な作品の中から、こちらは「Life」の部分を切り取って大きくプリントしたパーカーだそうです。
人間が生きる上での絶望や希望、恐怖などを表現した、4つでひとつの壮大なスケールのアート作品。
他にもパーカーと半袖TシャツはDeathとLifeの部分を切り取ったものが、それぞれ白と黒で計4型展開されていました。
どっちがとっちかは忘れてしまいましたが、HopeとFearも長袖Tシャツで展開されていたように思います。
パッと見たとき、既にその色使いやら、バックにドカンと壮大にプリントする辺りの潔さや、Supremeというブランドが持つアートに対する敬意も感じて惚れ込んでいました。
それに後押しを加えたのは、この作品が本来は4つでひとつになっていることや、そこに込められた意味を調べて知ったから。
作品名からも感じますが、「Death Hope Life Fear」というのは人間が生きる上で感じることや、考えたり、抱いたりする大きな感情たちのこと。
実に壮大なスケールで、ぼくたちの人生や日常にありふれて存在している感情を、生身の人間にドカンと突き付けてくる。
そこにぼくは、冒頭でも書いたような日常の生々しさというか現実味というか、アート作品でありながらも現実の世界に存在する感情を表現している部分にグッと来たんです。
現実を、人間臭さを真っ正面から突き付けてくる。その清々しさだったり、葛藤を感じさせる感じがとても好き。
パーカーなら「Death」をプリントしたアイテムもありましたが、ぼくは初めて見たときから「Life」の方に惚れ込んでいました。
「Death」の方には何だか、希望を感じられなかったから。
同じく人間の抱える感情のひとつではありますが、それを日々着ることを考えると、何だか暗く重苦しいような気がしていました。
対して「Life」には、ただ生きる強さのようなものを感じた。
もがき苦しみながらも、それが生きるということで、それが人生だということを真っ正面から突き付けられているかのような。
その全てを引っ括めて、楽しみながら人生を生きていく。
そんなことを思わせてくれる、現実に直面しても絶対に負けない「生きる」ということの力強さのようなものを感じさせてくれて、どこか頼もしい感じがしたんです。
だからぼくは「Life」を選んだし、生活に直面している「着る」という行為の中にこういった服を取り入れることには、とても意味があることに思えています。
一筋縄に上手く行く人生に憧れることってありますけど、無感情なロボットになれたら楽なのかな、って思うことも時々ありますけど、それが人間というもので、人生というもの。
辛く苦しい思いまで引っ括めて、全部楽しんでこそ人生なんだ、と心の底から思わせてくれるようなスケールの大きさを感じる作品なのでした。
ここからは生地なんかの話を少し書いていきますが、この素敵なアート作品を着れることを考えたなら、文句はありません。
元々Supremeのパーカーって生地がとてもしっかりしているので、1着くらい欲しいな、と思っているところでした。
フードはかなり肉厚で、とてもしっかりしています。
これは何だか、キャップの上からだったりでも被ってみたくなる気持ちが分かるくらい。
ただ、ぼくの中ではSupremeのパーカーってもう少し肉厚でヘビーオンスなものだと思っていました。
こちらも十分に目が詰まっていますが、それでもぼくが思っていたよりは軽めの生地感。
今回が春夏コレクションだからなのか、ある時期からボディーが変わったからなのか、ぼくが知っているそれとは印象が少しだけ違います。
ただ、長く着て洗濯を繰り返すうちに目が詰まってくると思うので、それを考えるとこれくらいが実用的なのかな、とも思ったり。
裏地はやや起毛した作りになっています。
冬は暖かく、春は少し暑いくらいなのかもしれません。
こちらも洗濯を繰り返して水を通すと劣化が心配ですが、そんなことを考えていたら着れる服も着れなくなってしまいそう。
服ってあくまで着るものなのに、ぼくはそういった部分に色々慎重になり過ぎて、新品で買った服は特に「せっかく買ったのにあまり着ていない」なんて事態が起こることも。
映画「ザ・トゥルー・コスト」を見てからは、安い服よりも、少し高くても自分が本当に気に入った服だけを買うことにしたぼく。
少数精鋭で本当にお気に入りの服だけを手に入れたら、せっかくだからガンガン着てあげたいと思っています。
気持ち大きめな作りのSupremeではMサイズを着ても余裕あり
身長178cm、体重65kgのぼくはMサイズを選びました。
Supremeの洋服を買うのは初めてだったのでなかなか迷いましたが、パーカーはジャストよりも少しだけゆとりを持って着たいぼくは、このチョイスで大正解。
元々ダボっと着るのが主流なパーカーではありますが、そういったスタイルや流行りのオーバーサイズな洋服が少し苦手なぼくは、無理のないサイズ感で着たいもの。
持っている服も基本的にはジャストサイズで選んでいるので、大きめで選ぶとコーディネートを組むのが途端に難しくなってしまう気がするんですよね。
SupremeのMサイズは、国内ブランドのLサイズ相当のように思います。
Tシャツを買うとしてもSサイズとMサイズで迷っていたのですが、いかんせん試着ができないアイテムだったので結果は今だに分かりません。
何も形をいじらなくても、後ろから見るとフードはこれだけ立っています。
顔まわりを包んでくれるイメージなので、小顔効果なんてものもあるのかもしれません。
首まわりもポカポカして暖かいです。
「Life」のグラフィックプリントもほとんど隠れることなく、その巨大な存在感は健在。
今まで黒いトップスをあまり着てこなかったぼくですが、濃いインディゴカラーのデニムと合わせると格好いいな、なんて最近思っています。
一部、Supreme好きの方々のTwitterを見てみると、「ギルバート&ジョージのパーカーは裏一面にプリントがあるから、蒸れて暑そう」なんてコメントもありました。
それを我慢してでも着たいくらい、こうして見ても本当に気に入っています、Lifeという作品を。
これから暖かくなってきてアウターが不要になる季節、せっかくだから背中に大きくプリントさせた「Life」を掲げて外へ出掛けたいものです。
前から少し思っていたのですが、以前ご紹介したミハラヤスヒロのスカジャンを着るにしても、背中に大きく入った刺繍がリュックで隠れてしまうのは本当に勿体ない。
パソコンも入るような、それでいて自転車に乗るにしても邪魔にならないように斜め掛けできるようなトートバッグでも買おうかな、と思っています。
ガンガン着て、水を通して生地の目が詰まったり、良い意味で雑に着れるようになる日が楽しみです。
大きくロゴの入った洋服が特に人気のSupremeでは、こういったアイテムは定価以上の価格で転売されることは少ないのかな、と思っています。
こうして素敵な作品がプリントされたTシャツやパーカーは、利益目当てで転売されたりして欲しくありません。
そして時々、こういった作品を「これでもか」と大きくプリントして販売してしまうSupremeというブランドのセンス。
とても素晴らしいものだし、アートへの敬意をひしひしと感じます。
ミーハーな人が着るブランドだとばかり思っていましたが、Supremeのことを少し好きになるきっかけとなったパーカーです。
【お知らせ】4月28日 (日)にファッション映画の上映会を行います
来たる4月28日に、東京新宿にて「ザ・トゥルー・コスト」という映画の上映会を行います。
流行りのファストファッションと、その裏側で巻き起こっている世界的問題を取り上げたドキュメンタリー映画。
この映画を見てぼくは、「服を着る」という行為ついて改めて、そして深く考えさせられました。
服を好きな人にも、そうじゃない人にも。
全ての、洋服を着る人にとにかく見て欲しいドキュメンタリー映画になっています。
チケットはまだ販売しておりますので、お時間のある方は是非お越しください。
必ず、あなたにとっての「服を着る」という行為の奥底にある心理や理由に出会うきっかけに、もう一度考えるきっかけになることを約束します。
いわはし
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