偉大なポップスター

すごく美味しいラーメンを食べた。

正直、これまで食事にあんまり興味を持ってこなかったから、食べ物の味の違いはそんなにわからない。

 

ただ、もうすぐ30歳。居酒屋はいつでも鳥貴族っていうのも、なんだかなというか。

今でもまだ全然使わないけど、少しずつ移動にタクシーを使うことがある人の気持ちもわかるようになってきた。

 

お金をかけるところが変わってきたというか。

10代の頃や20代前半の頃みたいに、例えば音楽に熱中してたくさんライブに行ったり、洋服に熱中して高いものを買ったり、っていうことは少しずつ減ってきた。

 

その分、お金の使い道が少しずつ分散するようになったのかもしれない。

 

ここ最近でいきなり食に興味を持ったって訳じゃなくて、きっかけはラーメンだった。

周りにラーメンが好きな人がいて、その人たちの話を聞いて、「へえ、そんなお店があるなら行ってみよう」って思ったり、連れていってもらったりしたことがきっかけだったように思う。

 

他の料理の味の違いはいまだに正直、よくわからないけど、ラーメンは形式がわかりやすくて、とっつきやすかった。

どんぶり1杯の中で完結する食べ物。

 

そこにスープがあって麺があって、具材があって。

「ラーメンはバンドと同じ」って言ってる方の言葉が、最初はシンプルに面白い冗談だと思っていたけど、最近はその意味も少しわかるような気がする。

 

ドラムがいて、ベースがいて、ギターがいてボーカルがいて。

たとえスーパーギタリストがいたって、その人ひとりだけが輝いているんじゃそれは、バンド全体としての魅力やかっこよさとは別なんだ。

 

そうやって最近、あるバンドを見て思ってしまったことがある。

その人のギターは、聞いてて涙が出た。

でもバンド全体で見たときのかっこよさは、その次に出てきた、学生時代からのメンバーで10年以上は続けてるであろうバンドの方が上だと思った。

 

バンドのどこにかっこよさを感じるかなんて人それぞれだけど、個人的にはグルーヴってやつがひとつ、かっこいいと感じる要素としてある。

これがグルーヴってやつで、そう簡単には形成されない。

 

そのグルーヴってものを、最近は少しずつラーメンにも感じるようになってきた。

おいしいラーメンを食べると痺れるし、最高のロックを聞いたときと同じ気持ちになる。

 

ラーメンとバンドが同じなら、他の食べ物ともきっと同じなんだろう。

というか食べ物に限らず、世の中の全ての事象に共通する感覚なんじゃないかとも思う。

 

なにかひとつ、夢中になれることを突き詰めた人は、ある感覚を手に入れる。

その感覚って実は、それだけじゃなく万事に通づることだって思う、その感覚。

 

それさえ手に入れたら、生きていく上で攻略本をひとつ手に入れたような気持ちになる。

その手がかりというか、とっかかりに手を伸ばし始めているような感覚があって今、充実してる。

 

ラーメンなんて、カップラーメンでもおいしい。

インスタントな冷凍食品でもおいしい。

 

でも、それだけでもいいけれど、その先を知れたらもっと面白い。

コンビニでもおいしいものが食べられる時代、それはラーメンに興味を持つきっかけをくれる。

 

J-POPだってかっこいい。

でも、それをきっかけに、好きになったミュージシャンのルーツをたどるような好奇心を持ったら人生はもっと面白い。

 

そのポップな曲を作ってるミュージシャンが、日本で売れる曲を作るためにどれだけのインプットをしているか。

どれだけたくさんの音楽を聞いているのか、好きなのか。

 

ポップスターを背負う覚悟。

日本を代表するようなシンガーソングライターの星野源の、ラジオを聞いてたら選曲してる曲が毎度やばいとか。

個人的にはそこでLizzoを知って、何年後かにフジロックで見て圧倒的な衝撃を受けたりとか。

 

ヒップホップグループとしてものすごい人気のクリーピーナッツとか。

本当にヒップホップが好きだからこそ、ジャンルが市民権と知名度を得るための覚悟を背負ってるように僕には見えて、それがすごくかっこいいと思う。

あれはヒップホップじゃないとか言われたとしても、そうやって話題になること自体が万々歳。

 

かっこいい曲が、オリコンチャートには入らないような日本の音楽的偏差値の低さがあるとすれば。

そりゃあ、その土俵で上に上がれるようなフォーマットで戦うのはごく自然なことだと思う。

キングヌーは売れることを目指したバンドなら、ミレニアムパレードを聞けばどっちを本当にやりたいのかも垣間見えるような気がして。

 

いずれにせよ偉大なポップスター。

興味さえ持てば入り口ときっかけはいくらでも作ってくれる。

それをたどって、何層もレイヤーを掘り下げていくような物事の楽しみ方ができれば、思ってたよりずっとずっと人生は楽しいものなのかもしれない。

 

とか思ってる30歳手前。

もっとワクワクして生き続けていきたいなあ。

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いわはし

いわはし

もうすぐ30歳になるので、うかうかしていられません。

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