日本を、世界を代表するファッションブランドの洋服がたくさん集まる、日本屈指のデパートが東京にはあります。
具体的な名前は出しませんが、誰もが聞いたことのある名前のデパート。
そこにぼくは、たまにふらっと寄ることがあります。
今、勢いがあるのはどんなファッションブランドなのか。
単純な好奇心だったり、もちろん「何か格好いい洋服はないかな」と探しに行くこともあって。
一度にたくさんの格好いいブランドの洋服に出会えるので、とても素敵な場所だと思っています。
でも、行く度に気になることがひとつ。
あのデパートに行くと、およそ8割くらいの確率で店員さんに足元を、履いている靴をじろっと見られるんです。
ちなみに、ぼくが履いていたのはCONVERSEのCT70。
心の内では「まあまあ服が好きなんだな」「可もなく不可もなし」なんて思われていたと予想します。
視線を足元に感じる訳ですが、これってぼくはなかなか怖いな、と思っていて。
履いている靴を、まるで品定めでもするような目で見られているんですよ。
被害妄想が過ぎる、と言われてしまえばそれまでかもしれませんが、過去に何度も経験していることで。
その度ぼくは思うんです。
果たして高い靴を、いい靴を履いていることが偉いのでしょうか。
「お洒落は足元から」なんて言います。
ぼくも仮に空から10万円が降ってきたとして、「このお金で身にまとうものを1つだけ買いなさい」と天から告げられたなら、きっと靴を買うと思います。
ただ、それでも果たして、本当に高い靴を、いい靴を履いている人だけが偉いのでしょうか。
あのデパートでは、ぼくは店員さんが靴を見ては人を格付けしているようにしか、どうしても見えないんですよね。
何ならお客さんも店員さんも、自慢の服を着てコレクションを歩いているモデルかのように振舞っている気配すら感じる。
まるで「自分の方がいい服を着ている」ということをアピールするかのような。
ただ買い物がしたいだけなのに、勝手に人と服装を比べられている気配すら感じます。
高い靴を、いい靴を履いていることが、いい服を着ていることが本当に正義なのか。
100歩譲って仮にそうだったととしても、高い靴を買ったところでその魅力が輝くのはほんの1年ほど。
半年に1回、コレクションが入れ替わるファッション業界において1年前の服や靴を身にまとっていれば、1年前のそれは「まだ着て、履いてるんだ」という目に変わっていきます。
正直なことを言えば、ぼくも学生の頃は、私服で大学に通っていた頃にはそんなことを考えていた時期もありました。
デパートに行っては高い服を買い、それを着ていることこそ至高、と思ってしまうような時期が。
これがいわゆる「マウンティング」と呼ばれる行為なのかもしれません。
服好きたちの間において、無言で絶えず行われるマウンティング行為。
でも、いつしかぼくはデパートで買えるような服に魅力を感じなくなっていきました。
正確に言うと、自分にとっての本当に好きな服を見つけたんです。
それはデパートに並ぶブランドの服ではなかった。
海外ブランドの洋服に比べればまだ、手に入りやすい価格帯のブランドです (それでもぼくにとっては十分に高価格帯)
だからと言って、それは必然的に、いわゆる「デパートに入っているブランド」の格下ということになるのか。
ハイブランドを好む人たちは、高くてもその洋服を着ていることが至高で、服にそこまでお金を掛けない=そこまで服が好きじゃない、とすら考えている気さえします。
しばらくそこに近い場所で服を買っていたりして、そんな考え方におけるキリのなさに気付いてしまったので、ぼくは距離を置くようになりました。
これはいつまでも見栄の張り合いで、新しい物を求め続けて終わりが見えない。
高くて、新しいものを着ていることが正義。
そう思っている人ばかりではないのかもしれません。
ただ、ぼくとしてはそんな感想を抱いてしまいました。
靴くらい、服くらい自分の好き勝手に楽しみたい。
というか本来、ファッションってそういうものだったはずです。
ぼくはGUの服も着れば、無印良品の服だって着る。
海外ブランドの服も着れば、カジュアルブランドの服も、国内デザイナーズブランドの洋服だって着ます。
高い靴を、いい服を着ていることだけが至高ではないとぼくは考えています。
自分の思う「至高の形」こそ普通で、一般的で、それを基準に人を判断するなんて。
自分にとっての普通は、他人にとっては普通ではありません。
その「普通」が、全ての人に通用する共通の価値観だと思わないで欲しいし、それで人を判断してなんて欲しくない。
ファッションはマウンティングの為にあるものじゃない。
けれど、そういった欲を上手く擽ってこそのブランドビジネスでもあるんですよね。
人よりも自分が優れていることをアピールするための道具じゃない。
ぼくは人に見せるためじゃなく、自分の気分を上げるために洋服を着るようになりました。
いわはし
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